ソーシャルレンディングはいままでどのような歴史を歩んできたのでしょうか。ソーシャルレンディングの歴史を知れば、ソーシャルレンディングの未来について知る手がかりにもなるでしょう。
そこで、この記事ではファイナンシャルプランナー&ソーシャルレンディング投資家の私が、ソーシャルレンディングの誕生から2020年現在に至るまでの歴史について解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
その後、ソーシャルレンディングはリーマンショックの後押しも受けて、世界中に広がっていくんだ。日本でも2008年にmaneoがソーシャルレンディングを始めてるね。
世界のソーシャルレンディングは個人に対する融資が中心なんだけど、日本ではうまくいかなかったんだ。
その後、日本のソーシャルレンディングでは企業に対する融資が中心になったんだ。
最近では、ソーシャルレンディング最大の問題点と言われてきた匿名化も解除されたよ。この先のソーシャルレンディングが楽しみだね。
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「初心者にソーシャルレンディング投資で後悔してほしくない」という思いから、わかりやすく正確な情報発信を心がけています。
ソーシャルレンディングの誕生
2002年 世界初のソーシャルレンディングがイギリスで誕生
2002年、イギリスでVirginMoneyが現在のソーシャルレンディングに近いサービスを開始しました。
当時VirginMoneyが提供していたサービスはインターネットを利用して知人同士が融資を行うことができるものだったようです。このサービスは個人から個人に融資する形のソーシャルレンディングの原型になりました。
このころから、インターネットを利用したサービスが注目をあびるようになってきました。
2005年 現在のモデルに近いソーシャルレンディングがイギリスで誕生
2005年にはイギリスでZopaが現在のモデルに近いソーシャルレンディングサービスを開始しました。具体的には、他人同士でもインターネットを通じて個人から個人に融資できるようになったのです。
ちなみに、Zopaが始めたのは主に3つあるソーシャルレンディングのビジネスモデルの中で、マーケット型と呼ばれるものです。
マーケット型ではソーシャルレンディング事業者が借り手の信用情報に基づいて借り手の格付けを行います。格付けをもとに、投資家はどのくらいの金利でどのくらいのお金を貸すか決定します。
そして、できるだけ借り手に有利な金利と金額を提示した投資家が融資を行うことができるのです。
ソーシャルレンディングの拡散
2006年 アメリカでソーシャルレンディングが始まる
2006年にはイギリスで始まったソーシャルレンディングがアメリカに渡り、Prosperがソーシャルレンディングを開始しました。Prosperが提供していたのもマーケット型のソーシャルレンディングサービスです。
2007年には世界最大手ソーシャルレンディング事業者のLending Clubもサービスを開始しています。
2007年 世界中でソーシャルレンディングが始まる
2007年にはヨーロッパ諸国、中国、韓国など、世界中でソーシャルレンディングサービスが開始されました。
2008~2009年 ソーシャルレンディングとリーマンショック
2008年、リーマンショックが起こり、アメリカを中心として世界中の経済が大きな打撃を受けました。リーマンショックの直接の原因になったリーマンブラザーズを始めとした銀行は、信用力の少ない個人や低所得者を対象として高金利の住宅ローンを扱っていました。
これをサブプライムローンといいます。この仕組みは誕生からしばらくうまく行っていましたが、アメリカで住宅バブルが崩壊して不動産の価格が下落すると貸し倒れが増え、担保にしていた不動産からも十分なお金を回収できなくなり、大きな損失を抱えるようになりました。
大きな損失にリーマンブラザーズが耐えられなくなって倒産し、リーマンショックは始まりました。
このリーマンショックはソーシャルレンディングの発展を後押しする結果になりました。銀行はリーマンショックを反省して審査を厳しくし、融資に消極的になったため、銀行からお金を借りることができない個人や企業が増えたからです。
ソーシャルレンディングは銀行からお金を借りることができない企業の受け皿になったのです。リーマンショック後にはソーシャルレンディング事業者が世界中で多く増えました。
ソーシャルレンディングと日本
2008年 日本でソーシャルレンディングが始まる
日本でソーシャルレンディングが始まったのは2008年です。この年、maneoがソーシャルレンディングサービスを始めました。maneoは現在でも業界有数の規模を持つソーシャルレンディング事業者です。
maneoが当時始めたのはオークション型のソーシャルレンディングサービスです。オークション型では借り手は借り入れの目的と自分の信用度をアピールをアピールします。
投資家は借り手の情報をもとにどのくらいの金利で貸し出すか決定します。そして、金利はオークション形式で決まります。具体的には、一番低い金利を提示した投資家が貸し出す権利を得られるのです。
maneoに続き、2009年にはAQUSH、2011年にはSBIソーシャルレンディング、2013年にはクラウドバンクがソーシャルレンディングサービスを開始しています。
2011年 個人向け融資への限界
日本でも、世界のほかの国と同じように、個人へ融資する形のソーシャルレンディングサービスが一般的でした。しかし、2011年頃から、日本のソーシャルレンディングは個人への融資に限界を感じ始めることになります。
たとえば、maneoは2011年に個人向けのソーシャルレンディングから撤退し、企業向けの融資に転換しています。その後、多くのソーシャルレンディング事業者は個人向け融資から撤退していくことになります。
日本で個人向けのソーシャルレンディングが成功しなかったのは貸し倒れ率が10%以上と高かったからです。日本では銀行や消費者金融などの努力により個人にお金を貸す仕組みが十分に整備されており、ソーシャルレンディングが入り込む余地はなかったのです。
個人への融資が成功しなかったことにより、当時は日本ではソーシャルレンディングは普及しないのではないかと言われていました。
2013年頃 企業向け融資への転換と成功
2013年頃になると、多くの事業者が個人への融資から企業への融資に転換しました。たとえば、2013年にはmaneoの社長が交代し、企業向けの融資に集中するようになりました。
そして、日本のソーシャルレンディングは企業向け融資に転換することで成功し、2017年頃まで毎年市場規模が倍になり、新規参入する事業者も増えました。2016年頃からは業界全体として成長ジャンルとして注目を集めるようになります。
さて、企業向けの融資が成功した原因の1つに、2010年に施行された改正貸金業法により従来のノンバンクが大きな打撃を受けたことがあると言われています。
改正貸金業法ではグレーゾーン金利が撤廃されて過払い金が多く発生し、これによりノンバンクが大きな損失を受けることになったのです。
これにより日本では銀行から借りられない企業の借入先が不足しており、ソーシャルレンディングがそのような企業の受け皿になったのです。
2017~2018年 ソーシャルレンディング最大の問題が明るみに
2017~2018年はかねてからソーシャルレンディング最大の問題と言われていた匿名化を悪用した事件が複数起こる年になってしまいました。
2008年に日本でソーシャルレンディングが始まってからしばらくは、ソーシャルレンディング事業者が借り手の詳細の情報を開示していましたが、2014年頃になって金融庁から借り手の詳細情報を隠すように指導が入るようになりました。これを匿名化といいます。
この匿名化はソーシャルレンディング最大の問題と言われていて、これを悪用して詐欺まがいのことを行ってしまう事業者が出てくるのではないか言われていましたが、その懸念が現実になったのが2017~2018年でした。
たとえば、みんなのクレジットというソーシャルレンディング事業者は投資家から集めた資金の一部を社長個人の借金の返済にあてたり、事前の説明と異なるところに融資したりして投資家に大きな損害を与えました。
みんなのクレジットは最終的に行政処分を受けてしまいました。
また、ラッキーバンクは投資家から集めた資金のほとんどを親族が経営する不動産会社に貸し付けていて、しかも担保の評価額も実際よりも高めに算出していました。ラッキーバンクも最終的に行政処分を受けて第二種金融商品取引業の免許取り消し処分を受けています。
この他にも2017~2018年には、軽いものを含めて複数の会社が行政処分を受けています。詳しくは以下の表のとおりです。
みんなのクレジット | 1ヶ月間の営業停止処分 |
---|---|
ラッキーバンク | 1回目:業務改善命令 2回目:第二種金融商品取引業の免許取り消し処分 |
エーアイトラスト | 1回目:1ヶ月間の業務停止処分 2回目:第二種金融商品取引業の免許取り消し処分 |
クラウドバンク | 1回目:3ヶ月間の一部業務停止処分 2回目:業務改善命令 |
maneoマーケット | 業務改善命令 |
2019年 匿名化の解除
2017~2018年に匿名化の問題点が浮き彫りになったこともあり、金融庁は2019年3月18日付けで匿名化の解除を発表し、借り手の詳細情報を開示できるようになりました。
2019年8月現在では以下の事業者が匿名化に対応しています。
今後、匿名化の解除によってどのような影響があるのか注視していく必要があるでしょう。
【2019年11月最新】日本のソーシャルレンディング事業者年表
最後に、日本のソーシャルレンディング事業者の年表を貼っておきます。
まとめ
ソーシャルレンディングは2002~2005年にイギリスで誕生しました。その後、アメリカなど世界中に同様のサービスが誕生していきます。日本でも2008年にmaneoがソーシャルレンディングをはじめました。
そして、リーマンショックもソーシャルレンディングの成長を後押ししました。
日本では世界では一般的な個人へ融資するソーシャルレンディングがうまく行かず、頓挫してしまいました。しかし、企業向け融資に限定することで成功し、日本では企業に融資するソーシャルレンディングが主流になりました。
そして、2019年にはソーシャルレンディング最大の問題と言われてきた匿名化が解除されました。ソーシャルレンディングのこの先には期待が持てそうです。
24の数値化可能な指標を用いてソーシャルレンディング38事業者のランキングを作成しました。
順位 | 事業者名 | 公式 | 利回り | 信頼性 | 投資しやすさ |
---|---|---|---|---|---|
1位 | クラウドバンク | 6.99% | |||
2位 | SBIソーシャルレンディング | 3.82% | |||
3位 | SAMURAI FUND | 7.30% | |||
4位 | オーナーズブック | 4.76% | |||
5位 | クラウドクレジット | 8.91% |