ソーシャルレンディング豆知識

【FPが解説】ソーシャルレンディングの匿名化|解除で何が変わるの?

ソーシャルレンディング投資を行っていると、「匿名化」「匿名化解除」などという言葉に出会うことがあります。

「匿名化って何?」
「匿名化が解除されたってどういうこと?」

と思っている方が多いと思います。そこで、この記事ではファイナンシャルプランナー&ソーシャルレンディング投資家の私が匿名化や匿名化解除について詳しく解説しています。

匿名化についてすぐ分かる記事になっているので、ぜひご覧ください。

新人 みのり
新人 みのり
編集長! 匿名化って何なんですか?
編集長 わさ
編集長 わさ
これまでソーシャルレンディング事業者が私たち投資家に対して、借り手企業の詳細な情報を開示することは禁止されていたんだ。これを匿名化と呼ぶよ。
新人 みのり
新人 みのり
匿名化は最近解除されたって聞きました。
編集長 わさ
編集長 わさ
そう! 2019年3月18日に金融庁から匿名化が義務ではなくなることが発表されたんだ。

これにより、ソーシャルレンディング事業者は借り手企業の詳細情報を開示できるようになったよ。

新人 みのり
新人 みのり
匿名化の解除で何が変わるんですか?
編集長 わさ
編集長 わさ
これは予想なんだけど、以下のような変化があると考えられるよ。
 

  • 投資家が投資する案件を選びやすくなる
  • 情報の公開度が事業者選びの重要な要素になる
  • ソーシャルレンディング全体のイメージが向上する
  • 詐欺事件が減る
新人 みのり
新人 みのり
よい変化がありそうですね!

SL投資法典はソーシャルレンディング投資家&ファイナンシャル・プランナーのわさが運営するソーシャルレンディング総合サイトです。

初心者にソーシャルレンディング投資で後悔してほしくない」という思いから、わかりやすく正確な情報発信を心がけています。

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匿名化とは?


匿名化とは、簡単に言うと、ソーシャルレンディング事業者が投資家に借り手企業の詳細情報を開示してはいけないというルールのことです。詳しく見ていきましょう。

日本でソーシャルレンディングが始まったのは2008年ですが、当時からソーシャルレンディング事業を行っていたmaneoなどは借り手の企業名など詳細情報を公開して投資を募集していました。

しかし、2014年になると金融庁からソーシャルレンディング事業者に対して、「借り手の詳細情報を開示しないように(匿名化)」「1つの案件で融資する企業の数は複数にすること(バスケット化)」という指導が入るようになりました。

もし投資家へ借り手の詳細情報を開示してしまうと貸金業法三条1項に抵触してしまう可能性がある、と金融庁は考えたのです。

貸金業法三条1項

貸金業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に営業所又は事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては内閣総理大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所又は事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては当該営業所又は事務所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。

[出典:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=358AC1000000032#35]

上記のように、事業としてお金を貸すためには貸金業者として登録を受ける必要がありますが、私たち一般の投資家のほとんどは貸金業者の登録を受けていません。

そのため、もし借り手企業を特定できる情報が開示されてしまうと、ソーシャルレンディング事業者を経由して貸金業の免許を持っていない人が実質的に貸金業を営んでいるのと本質的に違いがなくなってしまいます。

また、匿名化が行われていないと投資家が借り手企業に対して取り立てを行ってしまうという違法行為が発生する可能性もあります。

匿名化の弊害


匿名化はソーシャルレンディング最大の問題点と言われてきました。これは、匿名化により以下のような弊害が発生してしまったからです。それぞれ見ていきましょう。

投資家が借り手企業の返済能力を判断できない

借り手の詳細情報が開示されれば会社の財務状況などから借り手の返済能力を客観的、合理的に判断することができます。しかし、匿名化されているとそれができず、担保の評価もすることができません。

そのため、ソーシャルレンディングで投資をする時にはソーシャルレンディング事業者の審査能力を信頼するしかありません。これは投資家保護の観点から著しい不利益があります。

匿名化を悪用する事業者が続出

匿名化がされている状況だと、もし身内に甘い審査で貸したり、事前の説明と異なるところに貸したりしても、投資家は知ることができません。

そのため、匿名化を悪用して詐欺まがいのことをして行政処分を受けてしまう事業者が続出してしまい、投資家が損失を被ってしまいました。

匿名化解除の経緯


匿名化は以下のような経緯でついに解除されました。それぞれ見ていきましょう。

2018年6月 内閣府の「規制改革推進に関する第3次答申」

以前から匿名化は解除したほうがいいのではないかという声はありましたが、匿名化解除の議論は2018年になって本格化しました。2018年6月には内閣府の「規制改革推進に関する第3次答申」で匿名化の解除の必要について言及されています。

「規制改革推進に関する第3次答申」の内容は以下のとおりです。

クラウドファンディングは、新規・成長企業等と資金提供者をインターネット経由で結び付け、多数の資金提供者から少額ずつ資金を集める仕組みである。このうち、融資型クラウドファンディング(貸付型クラウドファンディング、P2Pレンディング、ソーシャルレンディングとも呼ばれる。)においては、資金の出し手(投資家)に係る貸金業法(昭和 58 年法律第 32 号)に基づく貸金業登録の要否は、投資家が貸付けの実行判断を行っているかどうかによって判断されている。貸付の実行判断の有無を見極める上で、規制当局においては制度の運用上、借り手を特定することができる情報が明示されていないこと(匿名化)と、複数の借り手に対して資金を供給するスキームであること(複数化)が考慮の一要素となり得るとされているが、実態としては、これら「匿名化」及び「複数化」の要素のみが強調されており、投資家が貸金業法上の貸付主体とはならないことを担保するためにプラットフォーム運営者が投資家に対して借り手の特定につながる情報を明示することを控え、また、複数化されたファンドへの投資の勧誘しかできていない。かかる状況は、投資家保につながらず、むしろ、不適切な融資を行うファンドへの投資を防止できないとの意見がある。市場の健全な成長のためには、プラットフォーム運営者が提供するサービスの果たす機能に着目し、事業の実態や制度の趣旨等に即して、新たな方策を検討する必要がある。

(中略)

融資型クラウドファンディングに関して、借り手の匿名化・複数化が必須ではないことを前提として、提供される金融サービスの果たす機能に即し、融資型クラウドファンディングのプラットフォームを運営する事業者、投資家、登録行政庁などの関係者の意見も聴取しつつ、金融商品取引法上の投資家保護と貸金業法上の借り手保護を図る観点を踏まえ、投資家に個別の貸金業登録を不要とするため従来の考慮の一要素とされてきた匿名化・複数化と並存する運用上の新たな方策を、借り手の属性なども含めて検討する。その際、実態として貸金業法上の具体的な懸念が発生していないとの指摘もあったことから、同法上の考慮が必要となる場合をできるだけ明確化し、適切な方法で公表する。

[出典:https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/publication/toshin/180604/toshin.pdf]

この答申を受けて、日本経済新聞が報道を行い、ソーシャルレンディング投資家の間でも「近いうちに匿名化が解除されるのではないか」と話題になりました。

2018年12月 証券取引等監視委員会による建議

2018年後期から2019年前期にかけては不適切な営業を行っていたソーシャルレンディング事業者が相次いで行政処分を受けた時期でしたが、2018年12月7日に、トラストレンディングを運営しているエーアイトラスト株式会社に対して行われた1回目の行政処分もその1つでした。

エーアイトラスト株式会社は投資家を募集する時に虚偽の内容を記載するなどして行政処分を受けたのですが、証券取引等監視委員会は行政処分を行うと同時に、建議を行いました。その内容は以下のとおりです。

金銭の貸付けを出資対象事業とする集団投資スキーム持分(以下「貸付型ファンド」という。)を販売する業者に対する検査において、
・ 資金使途等についての虚偽表示
・ 貸付先、担保等についての誤解表示
・ 貸付先がファンドからの借入れを返済することが困難な財務の状況にあることを認識しながら募集を継続
など、多数の金融商品取引法違反事例や投資者被害が生じている悪質な事例が認められた。

これらの事例が生じた背景には、貸付型ファンドを販売する業者の法令等遵守態勢が不十分であったことに加え、貸付型ファンドの投資家(資金の出し手)に対し、貸付先(資金の借り手)に関する情報が十分に提供されていないこともある。当該情報は、投資家が出資金の回収可能性を判断する上で重要な情報であるものの、貸金業登録に係る制度の運用上との関係から、現状では貸付先の特定につながる情報の明示を控えた運用となっている。

(注)投資家の貸金業登録の要否を判断する上で、借り手を特定することができる情報が明示されないこと(匿名化)と、複数の借り手に対して資金を供給するスキームであること(複数化)が考慮の一要素とされている。

したがって、こうした投資家への情報提供の状況に鑑みれば、貸付型ファンドに係る投資者保護の一層の徹底を図る観点から、投資家がより適切な投資判断を行うための情報提供や説明内容の拡充などの適切な措置を講ずる必要がある。

[出典:https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20181207-3.htm]

証券取引等監視委員会も匿名化について問題だと感じていたことがわかります。

2019年3月 匿名化解除

3月11日付の匿名の照会者らが提出した法令適用事前手続(ノーアクションレター制度)への回答として、3月18日に金融庁から匿名化の解除が発表されました。

具体的には、一定の要件を満たせば借り手の詳細情報を開示できるようになりました。公開できるようになった情報は主に以下のとおりです。

  • 企業名
  • 企業の所在地
  • 担保の詳細

ちなみに、「一定の要件」とは、投資家が借り手と接触しないことなどです。たとえ貸し倒れが起こったとしても、借り手企業に直接取り立てに行ったりすると違法行為になってしまいます。

新人 みのり
新人 みのり
法令適用事前手続ってなんですか?
編集長 わさ
編集長 わさ
簡単に言うと、事業者が「これをやりたいけど、法律的に大丈夫ですか?」と関係省庁に確認することができる制度だよ。
新人 みのり
新人 みのり
なるほど!

法律に関する問い合わせみたいなものなんですね!

匿名化解除で何が変わる?


匿名化解除で以下のような変化が起こると考えられています。

  • 投資家が投資する案件を選びやすくなる
  • 情報の公開度が事業者選びの重要な要素になる
  • ソーシャルレンディング全体のイメージが向上する
  • 詐欺事件が減る

それぞれ見ていきましょう。

投資家が投資する案件を選びやすくなる

匿名化解除により、投資家は投資する案件を選びやすくなると考えられます。借り手企業の詳細な情報を知ることができるのは大きなことです。企業名、業務内容、財務情報、経営者の経歴などの情報は案件の安全性を見極める上で参考になります。

社名がわかれば、企業のホームページを見るなどして追加で情報収集を行うこともできます。

借り手企業とソーシャルレンディング事業者が関連会社かどうかわかるのも匿名化解除の良い点でしょう。ただ、関連会社であることが必ずしも悪いわけではありません。

また、担保が設定されている場合、担保の住所や広さや築年数などについても開示されれば、担保の評価額の妥当性についても判断することができるでしょう。

情報の公開度が事業者選びの重要な要素になる

匿名化の解除は「必ず借り手の詳細情報を開示しなければならない」というわけではなく、「借り手の詳細情報を隠す義務がなくなった」というだけです。

そのため、借り手の詳細情報を開示するソーシャルレンディング事業者も、借り手の詳細情報を開示しない事業者も現れると思います。借り手企業の中には詳細な情報を開示されたくないと感じている企業もいることでしょう。

しかし、匿名化が解除された後に借り手企業の詳細情報を隠してしまうと、「何か問題のある借り手に融資したり、関連会社であることを隠して投資を募集したりしているのではないか」と疑いをかけられてしまうことになります。

 

逆に、もともとしっかりと借り手企業の審査を行ってきた事業者は匿名化解除に対応してくると考えられます。このようなソーシャルレンディング事業者にとって、借り手企業の詳細情報を開示できることはプラスに働くことでしょう。

公開することで信頼が得られれば投資家から資金を集める上で有利になります。また、借り手企業にとっても資金を集めるために動画メッセージを用いたりして、アピールが行いやすくなります。

投資家にとっては匿名化解除にきちんと対応してくる事業者のほうが信頼できると言えるでしょう。なお、2019年9月現在、匿名化の解除に対応している事業者は以下のとおりです。

ソーシャルレンディング全体のイメージが向上する

これまでにも何度も述べたとおり、匿名化はソーシャルレンディング最大の問題点と言われてきました。ソーシャルレンディングには「怪しい」「うさんくさい」などといったイメージも匿名化の影響が少なくなかったように思います。

匿名化が解除されれば業界全体の透明性が高まり、ソーシャルレンディングのイメージは向上することでしょう。そのため、ソーシャルレンディング市場の一層の規模拡大が期待できるでしょう。

詐欺事件が減る

今まで、ソーシャルレンディング業界では匿名化を悪用した詐欺まがいの事件が複数起きていました。匿名化解除により情報が多く公開されるようになると詐欺のようなことは起こりにくくなるでしょう。

まとめ

以前までソーシャルレンディング事業者が私たち投資家に対して、借り手企業の詳細な情報を開示することは禁止されていました。これを匿名化と呼びます。

しかし、匿名化がソーシャルレンディング業界の実状にあってあらず、投資詐欺まがいの事件が起こるようになってしまったことから、2019年3月18日に金融庁から匿名化が義務ではなくなることが発表されました。

匿名化が解除されたことにより、以下のような変化が起こると考えられています。

  • 投資家が投資する案件を選びやすくなる
  • 情報の公開度が事業者選びの重要な要素になる
  • ソーシャルレンディング全体のイメージが向上する
  • 詐欺事件が減る
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